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SH-Mobile ラボ2006 ワークセッション
 
  1. 「モバイル機器と空間の関係」高橋氏プレゼンテーション
  2. 「2029年までに予想される通信性能の面からみた携帯電話の発展について」中嶋先生プレゼンテーション
高橋氏プレゼンテーション
ワークセッションは、高橋氏のデザイナーとしての作品などを見ながら、モバイル機器と空間の関係、特に空間はどのような情報を発信するべきなのかを考えるヒントを提示した。  

■高橋氏 まずは、自分がこれまでやってきたことを紹介したいと思います。私は、デザインを、平面、空間、プロダクトのような立体、そしてアパレルのような2.5次元と分類しています。そして、それぞれのデザイン分野は、これまでは相互不干渉でくることが多かったと思います。
自分自身は、デザインは思考のプロセスであると定義しています。「design」という言葉が輸入されたとき、そこには「意匠」という訳語が当てられました。それ自体はよい訳だとは思いますが、それが「色」や「形」という名詞的な意味に特化されすぎたという印象があります。

最近はあまり使われない言葉なのですが、「形而上」「形而下」という言葉があります。「形而上」は精神世界、「形而下」は形そのものを表す、というように考えていただいていいと思います。しかし、先程述べたように、「意匠」という言葉は現在、あまりにもこの「形而下」のことばかりさしているように感じられます。しかし、実はデザインの過程には「コンセプト」などのようにその形に至るまでの経緯があり、そのプロセスは「形而上」だと言えます。
よくクライアントさんと話をしていて、あるデザインについてダメだしされた時に、「それはこのデザインに至るまでの論理〜形而上〜の部分がダメなのか」「それともアウトプットされた色・形〜形而下〜がダメなのか」という部分を理解していないような意見をいただくことがあります。そこがはっきりしていないと、話が行きつ戻りつと、大変なことになります。

また、私は生業としてアウトプットを出している人だけをデザイナーとよんでいるわけではありません。このような思考のプロセスを埋めていく人も、デザイナーとよびたいなと思っています。
ですから、いわゆるデザイナーさんだけでなく、営業の人も仕事のデザインをしていると思いますし、社長さんも経営というデザインをしていると思います。

これまで私がやってきた仕事では、工業デザインの他、サインデザインなども行ってきました。そんななかで、ロゴタイプのデザインも行ったわけですが、ロゴタイプやシンボルといった言葉は、現在、かなり混ざって使われているなという印象ももっています。
ロゴタイプは、もともと活字時代の、「ある決まった言葉」のために活字をあらかじめ組んでまとめていた、そのまとまりのことをそうよんでいました。ですから、シンボルやマークとは本来異なるものでした。

さて、今日は「モバイル×スペース」ということで、どのように空間の情報を提供していくのがよいのか、というようなことのヒントとして、サイン計画についての話を中心にしていきたいと思います。サイン計画は、一般的には建物の内部や敷地などの空間にどのような情報を提供するのか、ということを総称しています。
実のところ、私自身の仕事はサイン計画が増えていますが、サインのプロというわけではありません。ただ、なぜ増えたのかということを考えると、サインというのは、計画(プランニング)、グラフィックデザイン、筐体のデザインというようなさまざまな要素が組み合わされており、それぞれが私のやりたいことだった・・・ということにつきると思います。なんにでも挑戦できた、ということです。
仕事の流れとしては、配置図を作り、配置するもののリストをつくり、提示する情報にあったグラフィックスを考え、それを筐体のデザインにしていく、という形になります。

サインという言葉自体は、「知覚されるもの」の総称ですが、ここでサインとは何だろうということについて簡単にまとめておきます。
通常は、サインというと情報提供機能をさすことが多いと思います。商業的な看板や、さまざまな表示です。しかし、私はあえて、心象論や意味論でとりあげられるような、風景についてもサインの要素ととらえています。
例えば、「村のはずれの一本杉」というものがあったときに、それはランドマークになっているとともに、村のみんなの気持ちの象徴としての意味も含まれるわけです。単純にそこで与えられている情報だけではなく、より豊かな情緒的・心理的な情報も含んでいるのではないか、と考えています。

サインには、いくつかの種類があります。
アイデンティフィケーションサイン、定点サインと呼ばれるものですが、「ここは何ですよ」という定点を指し示すサイン、例えば「509号室」という部屋番号をさすサインや、トイレのマーク、ビルの名称もそうですね。
インフォメーションサインは、いわゆる情報サインで、「ここで何をしていますよ」といった情報をさすサインです。
ディレクションサインは、矢印など方向をさすサインです。
レギュレーションサインは、禁則サインともよばれますが、「やってはいけないこと」をさすサインです。例えば、「禁煙」や「撮影不可」というようなものです。
オリエンテーションサインは、今日のイベントの開催告知など、案内のサインですね。オリエンテーションサインとインフォメーションサインは、すごく似ている部分があり、たまに一緒に扱ってしまうこともあります。違いをあえて挙げるとすると、オリエンテーションサインには地図を伴うものが多い、ということがあるかもしれません。
デコレーションサインは、モニュメント的な、たとえばからくり時計のあるサインのようなものを指すものです。

それぞれのサインをどのように配置していくのか、という実務的な部分について説明しましょう。
まずは、来訪者の動線を知りましょう、ということがいえます。往々にして、情報提供者のロジックで考えてしまうことがあるのですが、そこに来る人のことをどのように考えるかということがやはり大切です。
このためには、来訪者の目的と、来訪者の分類を行っていきます。アクセスというか、駅からくるのか、車で来るのか、というようなことも大切です。また、建物内では平面上の移動のほかに、階層の移動、つまり上下の移動もあります。このときにも、エレベータを使うのか、階段を使うのかによっても、動線は変わってきます。
また、建物として、シンメトリーな構造をしているとか、空間に特徴だった癖のないようなもの〜例えば、各コーナーからの風景が一緒というようなビル〜では、利用者にとってはどこにいるのかがわかりにくい構造であるといえます。そういう場合には、本来のサインのほかに、コーナーごとにテーマカラーを配置するというような演出を加えることもあります。
次に、サインを可視化することについて説明します。私は理想的なサインは、必要な時に必要な情報が提示されていることと考えています。
「ほしいな」というときに、パッと表示されるもの、それが理想ですが、実際にはそれは技術的に難しかったりします。また、一般的に作家性の強い建築家の方ほど、サインの表現には無頓着だったりする傾向があるようです。
絵文字、ピクトグラムも、最近は情報の提示方法としてはやっています。ノンバーバルな、つまり非言語的なものであるために、母国語が異なっていてもある程度の情報を提示できるという利点があるからですね。そして、ピクトグラムは、アメリカのAIGA(American Institute of Graphic Arts)という団体が提供している、版権フリーのものがよく使われたりしています。JISでもありますし、オリンピックごとにグラフィックデザイナーが提案したりもしています。
土地に対して、どこに何を配置するかという行程は、プロッティングとよばれます。平面図をみながら、どのような動線になるかを検討し、そしてポイントごとに何を置くかを決めていきます。

さて、「どこでどういう情報がほしいのか」ということを考えてみましょう。
平面図で動線を定義すると、だいたいの定石のような提示の仕方はあります。しかし、動線がかならずしもサインがしめす導線ではない場合があります。つまり、平面で検討するだけでなく、それを立体的にとらえて検証できるのかがポイントになってきます。情報は必ず正面から見た時にわかりやすくなるのですが、その正面の位置が何に対してなのかということを把握しないと、見えにくいサインとなってしまいます。
特に緊急性の高い情報、出入り口、非常口、そして生理的なトイレ、これらをまずどのように最短距離で導けるかということを考えて、それをどのように表現するのか、そしてその表現が味気ない場合にはモニュメントなどでアクセントを加えていく、というような流れになっていくと思います。

高橋氏
中島先生
渡辺氏
田中氏
前田氏
 
■渡辺氏 多分、学生のみなさんが提案で考えている情報提示は、ディスプレイからの提示という形になると思いますが、それがリアルな空間の中ではどうあるべきか、そんなことを考える上で、基本的な原理原則はどうあるべきかということがよくわかったと思います。ウェブの設計でも同じようなことがよく言われています。  

■高橋氏 実際にやっている方がよく言われるのは、視認距離と大きさという問題もよく出てきます。文字の場合、どの距離で、どのような内容を見せるか、ということで、これは人間工学的なもののほかに、色彩学的な検討も必要です。赤地に緑は緑色色盲や赤色色盲の方には問題がありますし、黒い背景に白い文字だと膨張して見えるので見えやすい、などですね。小さい文字しか使えない場合には、意図的に背景を黒にしたりしますよね。フォントのデザイン、ふところのバランスなんかも、検討しなければならないですね。
ただ、情報を提供すると同時に、その情報がつれてくる世界、演出ということもトータルに考える必要があります。ふところがせまい明朝体は、本来、サインには向かないフォントですが、和室的な空間にゴシックのふところのひろいデザインのフォントは似合わないわけで、そういう演出的な部分とのバランスをとりながら、サインは考えていく必要があります。

 

■松尾さん ピクトグラムには、それだけではなく、文字で説明がついているものもありますね。



■高橋氏 あれは、保険ですね。ピクトグラムは、文化的な規範の中での学習ですから、ピクトグラムがもっている約束事が通じないことも考えられるわけです。そういった場合への、補助的なものです。

■田中氏 ウェブをやっている人は、最終的な知覚像が一意ではない、つまり使っているブラウザや環境によって表示が変わってくるというのが、そういうメディアでのサインを考える際の難問だと思います。

■高橋氏 まったくそのとおりですね。私のような古いタイプのデザイナーだと、組版というか、文字をどのようにその領域に組み入れるかが重要だったりします。文字のツメを調整していくというようなことですね。それがPCの画面だと、ずるずるとのびていってしまうような感じですね。スタイルシートなどカチっとした表現にするしくみもあったりしますが、それは「ユニバーサル」な情報の提供という観点からは、あまり推奨されないかもしれません。結局は、そのサイトでどのような世界を提供するのか、どのような世界をつれてくるのかということを考えて、「今回はユニバーサル性はちょっと低めでもデザイン優先に」などというような判断をしていくことになると思います。
ホームページのデザインをされる方は、優秀な方もいらっしゃいますが、「何バイト文字か」ということは話題にしても、文字とスペーシングに関する意識は、印刷からデザインにはいってきた人に比べると無頓着というか、低いと思います。もちろん、どうしたって限界はありますが、デザインのこれまでの方法論をいかしていくのかということが大切だと思います。

■渡辺氏 サインを設置する際によく使われる4つのカテゴリー〜つり下げ、突き出し、壁付き、自立〜の観点から見て、例えば地面に表示されたサインというのはどのように考えられますか?

■高橋氏 私もよく使います。例えば、展示関係ですね。つり下げという情報の提示の際でも、吹き抜けの場合では危険すぎるとか、駐車場の場合だと高さ制限があるような場合もあるわけで、そういう場合には床面にサインをつけることが必要な場合もあります。ただ、うまくグラフィックスデザインとして処理できている場合と、「そこにしかできない」というのでやっつけ仕事になっている場合とだと、違いますよね。

■渡辺氏 銀行のATMのような、「こういう風に並んでください」というような自分たちでつけたようなサイン、デザイナーが関与していないというか、空間の使い手がカスタマイズして使っているサインだと思いますが、時間が経つにしたがって空間が変化し、サインも変化する・・・ということがあるならば、固定式というよりは今回のモバイルツールを使ったような、可変的な情報のサインをどう考えていけばよいのでしょうか。

 

■高橋氏 自立型のような設置の仕方でも、ある程度可変情報を提示できると思います。
よく、建物が建った時にはすごくきれいなのですが、そのあとA4の紙に出力したようなサインがテープなどで貼られていく、駅なんかそうですが、そういう場合には、管理者側が「自分が動きたくない」ために勝手にやっているという例が多いと思います。もちろん、最初の導線の読み込みが甘いケースのように設計段階の話もあるでしょうし、その場合には現場の問題というよりも必要な情報が足りないという問題もあります。

また、こういうことを考える際には、私は「情報のリズム」ということをよく考えます。一本道だからといって、最初と最後に「はじまり」と「おわり」という情報を提示するだけでいいのか、ということです。もちろんそうではなく、ある時間に情報の提示がないと人間はとても不安に感じると思います。情報を提示する場合にも、「このくらい歩いてきたから、そろそろこの辺で、あと何mという表示が必要だよね」という配慮が必要と思います。そういう、設置のリズムが悪いサインだと、ある場所ではうるさすぎ、ある場所ではたりない、結果として現場の判断でよけいなサインが貼られていく・・・ということになると思います。図面から、それを読み取れない人もいるわけですし、例えばゼネコンの所長とかですと「情報はついていればいい」「つけるのには1点10万なので、雑貨屋さんで400円のサインを買ってきたっていい」みたいな判断になるかもしれない。そこでは、提示される情報量は同じかもしれませんが、質が異なってしまうわけですよね。それも設置のリズムを乱すものになり、結果として空間のクォリティ全体を下げることになってしまうと思います。

このリズムというか距離感は、「なんでもかんでも可変的に情報を提示すればいい」ということではないと思いますね。そこをうまくコントロールできる方法論があれば、可変的なサインの提示に新しい展開があるのでは、と思います。

 
■山本さん それは図面からの定量値から判断するのは難しいのでしょうか。  
■高橋氏 歩くスピードの個人差や、展示する内容によっても、例えばゆっくり一つずつ見せたいような場合など、いろいろ考えることが増えてきますよね。
あとは、空間的な節というか、物理的に節のようになっているというよりは、空間の中で人が群れるような場所ができてくることがあります。そういう、人の多いところには、情報を提示しなければならないでしょう。
拡散するところに情報を提示しようとすると、先ほどのさまざまな個人差を考慮してつけなければならなくなりますので、この空間の節は大切だと思います。
 

■松尾さん 先ほどの話で情報が多すぎると煩わしいというようなことがありましたが、テクニックとして、表示する情報を減らすというようなものはあるのでしょうか。

■高橋氏 まずは、情報の送り手が、情報のディレクトリとプライオリティをしっかりと整理できているのかによると思います。
特に銀行で、ホームページでの情報の提示にしても、ATMでの手順にしても、そのような部分が整理できていない、使いにくいものが多いような気がします。

そこを改善するのは、別にデザイナーというわけではなくて、最初の話に戻りますが、思考のプロセスがふめる人、つまり広義のデザイナーがふえていくことで解決していけると思うのですが、日本ではそういうことが教えられてこないですよね。例えば、デザイン科の学生というと、日本ではそれが即デザイナーの予備軍としてとらえられますが、海外ではまず1クラスに80人とかもいないし、普通の企業に「私たちはデザインを勉強してきました。それをベースに会社での仕事に役立てます」として就職することが多いという話を聞きました。デザインを学んだからデザイナーになるというのではなく、造形とかさまざまなデザインをやってみたけれども、企業の中でデザインをジャッジする立場として仕事をすることもできるわけですよね。教養というか、民度のなかにデザインがはいっているか、ということですね。

■渡辺氏 最初の、クライアントさんとのデザインのやりとりにもどると、企業の中にデザインのプロセスをジャッジできる人がいないということが問題点で、丸投げの割に、「何かわからないけど嫌だ」という結論をだしてしまうというような話ですよね。

■高橋氏 多いのは、発注者側が要求を整理できていないことですね。その段階で代理店やデザイナーがはいっても、ジャッジできないですし、クライアントさんでもジャッジの方法もプロセスもわからない、しかも「昔、趣味で油絵を描いていてね」というような方が発注者チームにはいってしまう・・・ということがありうるわけです。最後は好き嫌いで決めてもらっていいにしても、そのプロセスが共有できないと、プロジェクトをすすめていくのは難しいですよね。こういうものは、OJTでしか学んでいけないものだと思うので、発注者側でもかなり勉強が必要でしょうね。

■松尾さん 音声による情報の提示の話がありましたが、音声以外だとどのようなサインが考えられるでしょうか。
■高橋氏 うける情報のうち、視覚情報が80%くらい、と言われていますので、やはり聴覚、そしてそのあとは触覚的な情報になるでしょうね。
ただ、情報量的に言うと、視覚情報以外は二次的な情報、つまり視覚をサポートする情報となってしまうかもしれません。

■渡辺氏 以前、深沢直人さんが言っていたのですが、渋谷駅のホームで、ケータイメールをうちながら歩いている若者は、盲人用ブロックを手がかりに歩いていた、という話があって、これは面白い事例でしょうね。
アフォーダンスを自分で探っていくというか、二次的な情報を上手に活用しているというか。

ダイアローグ・イン・ザ・ダークというワークショップも有名ですね。視覚障害者と一緒に、真っ暗な闇の中を歩くというものですが、そうすると圧力を感じるような真っ暗闇の中で視覚が奪われると、聴覚や嗅覚、触覚や第六感みたいなものまで増幅されるような印象になります。そこでは、いかに視覚に頼っていたのかということとともに、残りの感覚器を総動員しようとすることがよくわかる体験でした。

■高橋氏 漆黒の闇というか、すぐ近くが見えないというものですよね。

■福島さん 最近は、暗闇でのレストランも登場したようです。真っ暗な中で、ナビゲーターは盲人の方で、という演出のようですね。

■渡辺氏 ダイアローグ・イン・ザ・ダークでも、最後は真っ暗な中でバーが用意されていて、そこでワインなんかを飲むのですが、ぜんぜん何を飲んでいるのかもわからない。これはドイツで始まったワークショップなのですが、そのときには最後にお金を払ったりもしたようで、するといくら払ったのかすらわからない。盲人の人に「お金足りませんよ」なんて声をかけられるというのです。この体験はすごいと思いますよ。

■高橋氏 ミツバチなんかは、人間にとっての可視光線より広い範囲を可視光線としてとらえることができるといいます。つまり、ミツバチに比べれば、私たちの視覚も健常ではないというか、つまり絶対はないわけですよね。
トンネルなどでは、明順応・暗順応というか、暗さの調整をしますよね。それがないと、トンネルをでたところで外の明るさに目が慣れないということがおこります。コピー機でもそういう部分を補正して、いまはきれいになっていますよね。そういう特性を知った上で、どう考えるかですね。

■渡辺氏 最初のところで建物のリノベーションの事例として札幌のインタークロスクリエイティブセンターの話が出ました。2029年は、きっと新しい建物は無闇に建てられないでしょうし、サステナビリティーに対する欲求のような高まりもあるとすると、無闇に新しいものをつからず、今あるものに新たな価値を少しずつ反映させていくということが大切になっていくのかなと思っています。そういう時の一つのヒントとして、サインの方法論は大切だと思いました。この無闇にモノを作らないために、いかに情報空間を現実世界に結びつけていくのかということを考えました。

 
 
中嶋先生プレゼンテーション  
つづいて、2029年までに予想される通信性能の面からみた携帯電話の発展について、中嶋先生からプレゼンテーションがあった。 ワークセッション風景

■中島先生 モバイルの2029年ということで技術的なことも少し念頭においてほしいなと思い、荒唐無稽なことにならないように資料を作ってみました。
モバイルの発展というといろいろな尺度があると思いますが、私のような技術者がよくやるのは伝送速度についてですので、ここでもそれに絞って説明したいと思います。

1979年の自動車電話というのは、音声でのコミュニケーションはありましたがデータ転送はありませんでした。10年くらいは、音声主体の時代と言えると思います。
第2世代ではじめてデータ転送が開始され、はじめは数kbit/secくらいから始まりました。
そのあと、そして今後も伝送速度はどんどんあがるようにみえます。ただし、光ファイバーのようなものを利用した伝送と、無線での伝送ではかなり異なります。実際には無線での伝送速度はそんなにあがるものではありません。ここであがっているように見えるのは、保証の問題でもあります。第2世代では誰でもこの速度は保証しますよ、というような意味合いでした。その次の世代はベストエフォート、つまり努力によってそのスピードが出ることはありますが、それは保証しない、というものでした。いわば、みんなが使うと遅くなります、というもので、伝送効率が上がってはいないのですが、見かけ上、伝送速度は上がっています。その次では、ベストエフォートに加え、エリアも基地局のそばでなら、というような条件がついた時に、14Mbit/secまでいきますよ、という言い方をしています。

2029年の時の伝送速度を考えると、この伝送速度が屋外でのものと、屋内でのものという形でわかれて発展することが考えられます。それぞれの条件で密度も、使われ方も異なると思われますので、それぞれにあった形で発展していくのではないかと予想できると思います。
14Mbit/secという速度だと、ハイビジョン映像の伝送速度と同じくらいです。でも、だれもがハイビジョンを見られるのではなく、周りで誰もデータ転送を使っていなかったり、基地局のそばにいたら、というような条件がつきます。現実には、3.6Mbit/sec程度になるでしょう。
将来的には、携帯電話系は、屋内で1Gbit/sec以上、屋外であれば都市部で1Gbit/sec程度をみんなで共用という形になるのではと考えられます。
郊外では、出力をあげればこのような速度は出ると思いますが、携帯電話では体のそばということもあって、医学的には体にここまでなら影響を与えてもよいという熱的な基準もあって、携帯電話端末のような形状だと難しいかもしれません。ただし、例えばPCのような形であれば、このような数字を達成できると思います。

無線LANのようなものだと、10Gbit/secくらいまでは、将来達成できると思います。
ワイアレスは、スピードのほかにも利点があると思いますので、このようなスピードを基準にしたものだけでなく、スピードは遅いけれどもすごく小さいという無線タグの使い道も増えるでしょうし、センサーネットワークというような使い道もでてくると思います。
ITS系の使い方としては、現在でも交通情報のような利用の仕方は現在もありますが、将来は衝突しそうということを検知して車間を調整するというような、衝突するにしても影響を軽減するようなしくみが、無線技術を利用して実現できるのでは、と考えられると思います。

■田中氏 使える周波数帯は大切ですよね。政治とかいろいろあると思いますが、これから広がったりすることはあるのでしょうか。

■中島先生 土地と一緒で、使える周波数には限りがあるので、それを割り振っていくという形になると思います。周波数が高い方というのはあまりとばず、低い方はよくとぶかわりに、低い方はそんなにチャンネルを入れられない一方で高い周波数では多チャンネルが実現できる、というようなメリットがあると思います。

■田中氏 というのは、実験で試作したりする際にも、どの周波数帯が使えるのかというのが気になっているところです。ある周波数帯域は実験用として開放してほしいなという要望があったりします。大学の研究用にフリーバンドがほしいということなんですが。

■中島先生 ラジオのように、使う人にある程度の自由を与えられる仕組みというのは、考えられていますね。ソフトウエア無線というようなものです。
また、機器があいている電波の周波数帯を認識して、有効に電波を利用するというようなことも考えられます。
テレビなどは、アメリカでは逆にケーブルをつかって送ろうということがすすんできていますので、そこであいた分の電波をどのように使うかというのも、興味があるところです。

■渡辺氏 ネグロポンテが一時期言っていた、放送は電波・通信は有線だったのが、逆転して放送が有線・通信が無線というふうに変わっていくのかな、ということですね。
FONのようなものもでてきていますし。

■前田氏  タクシーで走っていても、フリースポットがみつかりますからね。

■高橋氏 昔、ある大臣がラジコンが好きで、それがもとでいきなり使えるバンド数が増えたということもありました。なので、規制緩和というか、大臣にすごくオタク的な人が就任すれば、解決するのかもしれないですね。

■前田氏  この間のテレビ番組で紹介していましたが、GPSを利用して工事の自動化を考えているというのもあるみたいですね。測量をしていたころと、GPSで、その中間なしに進歩があったのがすごいなと思います。
また、衛星通信にも興味があるところです。

■中島先生 衛星はアメリカや中国のような広いところだとメリットがあるのですが、日本だとそれほどメリットがないので、だんだん規模が縮小しているんですね。

■高橋氏 GPSということでいうと、地球の地上は動いているので、古い図面と現地とでゆがみがかかっているというかずれているそうですね。現場では、人間ならそれを補正できると思いますが、機械で自動的に補正していくのは難しいという話を聞いたことがあります。

 

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