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SH-Mobile ラボ2006 ワークセッション
 
   
一次審査通過作品
9月下旬に行われた審査会では、多くの応募作品から5作品が一次審査通過作品として選出された。残念ながら、選出された作品のうち1作品については辞退があり、最終的に二次制作にすすむ作品は、次の4作品となった。
 松尾翔さん
 ヤオヨロズシステム〜モノと対話を〜
 桾沢和典さん
 2029年モバイルコミュニケーションのかたち
 山本哲也さん
 mobile future
 福島慶介さん  SNS.plug-in
 

ラボメンバー学生メンバー自己紹介
ワークセッションは、今回から参加となった、一次審査を通過した4 名の学生との自己紹介から始まった。

学生メンバー■松尾さん 今回応募したきっかけは、私の研究分野に似ている、関連した分野ということからでした。ウェアラブル機器、特にヒューマンインターフェースの分野の研究を行っています。2029 年の社会は、ユビキタス社会になるだろうということを想定していて、それはどこにいても情報を扱える社会だろうと考えています。その中でも特にウェアラブルに注目しています。今回のアイデアは、ヤオヨロズシステムという、人とモノが会話ができるシステムについて提案しました。人とモノが会話をするシステムはこれまでにも多くあったと思いますが、今回の提案では、ウェアラブル、つまりユーザーが情報機器を身につけるようになることで、いつでもそういったモノとの会話の機会ができるのではないか、またそれを通して人とモノとの合意形成のような新しいインターフェースができるのではないか、ということを考えました。

■桾沢さん 今回の提案では、人間のもつ「ものの見立て」をコミュニケーションツールに使えたらどうだろうと考えたところからはじまりました。例えば子どもの頃に遊びの中で見立てたさまざまなルール〜例えば、地面に線を引いて、ここからそっちには行ったらダメなところ、というような〜を、都市空間の中に仮想的に再現することで、新しいコミュニーションになるのでは、と思っています。二次制作ではそのような新しいコミュニケーションを作るという部分をビジュアル化していきたいと考えています。

■山本さん 私は工学部でウェアラブルの研究をしていますが、今回はコミュニケーションに重点を置いて考えてみました。例えば、携帯電話を「情報をうけとるツール」というだけでなく、「情報を発信し続けるツール」として利用できたとき、自分の情報を発信し続けることがファッションのようになったなら、それは新しいコミュニケーションになるのではないかと考えています。

■福島さん 私は専攻では、都市解析を行っています。今回の提案では都市を変える可能性のあるものとして、携帯電話を考えてみました。ネット上でのコミュニティというか人のつながり方と、都市をうまく組み合わせられないかというのが出発点でした。現在、もっとも身近なインターネット端末となった携帯電話と、都市がうまく結びつけられないか・・・と考えています。

 
田中氏からの講評
田中氏は今回、慶応義塾大学・湘南藤沢キャンパスの研究室からのオンライン参加となったため、事前収録したビデオ映像により、各学生の作品についての講評を行った。

田中氏■松尾さんへのコメント
非常によくまとめられていると思います。しかし、人間が人工物に生き物性というか生物らしさを感じるのは、最終的には表現やインターフェースの問題、つまり、心理的にそのものについてどのような感情を持つかという観点からのデザインが必要になると思います。

■桾沢さんへのコメント
大変魅力的な提案に感じているのですが、ページをすすむごとにフィージビリティ(実現可能性)が低下しているのが気になります。例えば、提案の中での「場所がつながる」ということで何が起こるのかについての説明が足りないと感じます。また、日中に投影型のインターフェースが機能するのかなど、検討課題がありますね。

■山本さんへのコメント
文章で書かれていることと、ビジュアルで表現されていることにちょっと距離があると感じました。つまり、文章ではいろいろな提案がされているのですが、ビジュアルでは視覚の部分に絞った提案のように見えてしまうので、そこをふくらませていってほしいと思います。

■福島さんへのコメント
提案内容はよく理解できるのですが、この提案の必然性がよくわからなかったです。ディテールをつめていくことで、どのような必然性からこの提案が生まれ、何を解決するのかを、表現してほしいと思います。また、その際には過去の素材に頼らず、新しい空間のあり方のようなものを表現してみてほしいですね。

田中氏■全体の講評
文章で表現できているのにビジュアルの表現がたりない、逆にビジュアルはよいが文章での表現が十分でない、または実現性やディテールの面で検討がたりないというように、ここに集まった提案には何かが足りないように思います。その部分を埋めていってもらい、二次制作を行ってほしいと思います。

 
討議
田中氏の講評をうけて、メンバーから学生への講評という形で、討議がすすめられた。
中島先生■中島先生 2029 年の位置づけを考えるのは難しいことだったと思うが、そこをもう少しつめてみてほしかったと思いました。例えば1979 年を思い出してみたとき、パソコンもなかったし通信手段といえばほぼ電話のみでした。私自身の印象で考えると、ディック・トレイシーにでてくる腕時計型携帯電話はかっこいいなと思ってはいましたが、それを技術的に実現できるとはいろいろな技術的な理由から思っていなかったものです。でも、今はそれは夢ではなくなってしまっている。1979 年と今ではそのくらいのギャップがありましたし、今と2029 年にもそのくらいのギャップがあるでしょう。そういう感覚で提案をとらえ直してみてほしいと思います。もう一点、それぞれみんな一人の発想で組み立てられた世界だと思うのですが、どうだったでしょう。できれば、周りの人とディスカッションしながら、提案の必然性やディテールをふくらませてほしいと思うのです。
渡辺氏■渡辺氏 25 年前、25 年後といっても、私たちの日々の生活自体はほとんど変わっていないと思います。むしろ、変わったのは経験の質ではないでしょうか。例えば、コミュニケーションをとるということ自体は変わっていないのですが、携帯電話がなかったときのアポイントの取り方は、今だともう想像ができなかったりしますよね。それは、技術によって経験の質が変わってしまったものと考えられるわけです。そのような経験の質の変化をどのように提案に盛り込めるかを、考えてみてほしいんですね。もう一点。技術はこれまで足し算で発展してきたと思います。ラジオに映像がつき、カラーになり、ハイビジョンになるというような感じですね。しかし、そのような足し算ではない何かを必要する人たちもいるかもしれません。足し算をもとに技術が発展していった時に、何をピックアップし、そこに何が足されて、しかし全体からは何が捨てられたのか、そういう点についても考えてみてほしいと思います。
高橋氏■高橋氏 これまでのコメントとちょっと重複する部分があるのですが、提案の際の与条件の整理が大切だと思います。つまり、何について注目し、それをどのようにふくらませたか、というような提案自体の与条件がまとめられている必要があると思うんですが、そこの部分の練り込みが足りないので、全体の必然性やディテールといった点で弱さを感じてしまうのだと思います。
前田氏■前田氏 どういう世の中になっている時にどんなサービスが必要なのか・・・という視点が欲しかったと思います。それは、足して、足して、足して、という未来だけでなく、今でもある問題をどのようにしたら解決していけるのかという視点ともいえるのではないでしょうか。今ないものを想像することだけが未来ではないと思うのです。
 
■渡辺氏 ところで、「2029 年のモバイル」という今回のコンペのお題について、みなさんはどのようにとらえたのか、聞いてみたいのですが。

討議の様子■松尾さん やはり最初にユビキタス社会ということを考えました。いつでも情報を扱える社会ですが、逆にいつでも情報を扱うということはどのようなことなのか、という点から考えはじめました。モノにはRFID がつき、ウェアラブルなコンピュータでコミュニケーションをとる、その技術基盤をもとに考えられるのが、「めんどうくさくない生活」、日常の手間をさまざまな形でサポートしてもらえる生活というものでした。

■桾沢さん 2029 年は予想がつかないな、と感じました。ただ、コミュニケーションのツールとして何かがあるのは変わらないとも思いました。携帯電話では音声とテキストをもとにしたコミュニケーションにとどまっていますが、技術が伸びた後は、もっと身体的なコミュニケーションをサポートしてくれるのではないかと考えました。

■山本さん 第一印象としては、先すぎるなという印象でした。ただ、楽観的な未来を考えてみました。ユビキタスというテーマだと他にもいろいろとでてくると思ったのでコミュニケーションのツールとして考えてみました。

■福島さん 2029 年はSF のような世界ではない、予想できないものではないなとは思いました。いろいろな機器はインテグレートされたとしても、それほど生活は変わらないかなと。

■高橋氏  今回の提案で、複数の人の意見を聞いた人はどのくらいいましたでしょうか。今回のコンペの裏読みをするなら、いわゆるデザイナーの人たちが考えるような色・形の組み合わせによる未来像ではない、新鮮さを学生さんには求めている・・・ということになるんですが、ちょっと「娑婆臭い」内容が多かった気がするんですよ。ビジネスモデルよりというか。自分が期待している部分で言うと、足し算というよりも倍、二乗になっていく飛躍があるものだとよかったのですが、そこまでやった提案で一本をとるというより、技のかけ逃げに近い印象をもったというのは、その点です。
■渡辺氏 「2029 年にはこうなる」という予言のようなリアリティではなく、問題の所在をつめてもらうとか、論理的な整合性というか、世界観がしっかりしているとよかったと思います。SFでは、「未来がこうなる」というよりも、その未来の世界観の中で解決すべき問題がストーリーになっていると思うんです。本当の2029 年がどうなっているかではなく、どう問題と向き合ってそれをどうしたいのか、技術がどうできるのかを考えてみるということだと思います。
■中島先生 せっかく一次審査を通ったという連絡があったのに、怒られてばっかりという印象を持ったかもしれないのですが、この視点はこれから研究を行っていく上でも参考になると思いますよ。また、技術自体は、そろそろ煮詰まってきているのかなという印象を持っています。そこを学生さんのアイデアに突き破ってもらいたかったなという希望は、もちろん、ありましたけれど。
■高橋氏 現実的に、よっぽどの基礎研究の発展がない限り、確かに技術的な拡張は難しいのかもしれないですね。私のこれまでの仕事の中では、ジンジンするくらい考えて、考えて、様々な組み合わせを検討することもありました。でも、そのような経験は、学生の時にこそ必要なのかもしれないですね。そのときに、独りよがり的に考えるのではなく、いろいろな人と話していくことが大切だと思います。
■前田氏 そうですね、うまく次につなげてほしいと思います。可能性は感じているので、私の言葉で言うと提案に「なまめかしさ」のようなものを取り入れていってほしいと思います。割合、送られてきた作品はモラルの高かった提案が多くて、逆に「これって悪用されたらな」という視点もあるのでは、と思うのです。最先端の技術は常に、社会にでた時に新しい形で悪用される危険性もはらんでいると思います。もしコンペのことを考えていてその視点をおさえていたのであれば、このあとの二次審査ではそこを出してみてもよいと思います。
■田中氏 応募者の所属の研究室というか、しがらみからは離れて考えてみることも必要かもしれないですね。それぞれの大学での研究をはなれたところで考えてみることで、何か広がりがでてくるのではないかと思います。
■高橋氏 そうですね、今の段階では、このアイデアを削っていって形にするという余裕がある訳ではなく、まだ一度ふくらませる必要があるでしょうね。そして、削るという過程にはこちらもコメントできるかもしれないのですが、「アイデアに何を足したらいいでしょう」という点については、こちらからは何も言えないと思います。足した時には、「そのアイデアは誰のもの?」という問いが必ずついて回るので、それではコンペにならないというか。
■松尾さん 「便利な技術」という点では、確かにもう限界かなとも思います。そこで私が考えたのは、「ちょっと不便だが役に立つ」というようなアイデアでした。スイッチを入れればすむものとのコミュニケーションに、対話というプロセスを組み入れることで、少し「面倒」「不便」だけれども、そこに本質的なものや別の気づきがあるのではと考えました。
■前田氏 不便の先に得られるメリット、快感があるなら、それもありだと思います。しかし、3 階から1 階に降りたいという時に単に不便をはさむというのであれば、それは技術と呼べるのか疑問なんです。その目的が重要ではないかな、と思うのです。私の言う「なまめかしさ」「危険性」は、そのメリット自体に危険性があるような、危険性です。
■中島先生 極端に言えば、原子力と原爆の関係のような。
■前田氏 そうですね、私も10 年くらい前にSNS のようなものを作ったのですが、もしこれが世界中に広まってしまったとしたら、そこではこれまでの人間関係や信頼関係だとかを越えていけるわけで、そこで見たくなかったものが見えてしまう危険性ということも考えてしまいました。例えば、自分がつきあっている女性の不義理だとか、人と人との関係がわかりやすく便利になったおかげで、そういう見たくなかった不幸にあたってしまうというような。そういう可能性を考えてみてほしいと思います。
■中島先生 この今でてきた「不便」というキーワードも、松尾さんの中ではなにかいろいろとあるのかもしれないのですが、ここでは私たちにはその背景がまだ伝わってこない。そこをふくらませて、私たちが「ああなるほどな」と膝をうつような形で発展できればよいのですが。
■前田氏 そういう意味では、便利さに対する飢餓感が足りないのかもしれないですね。例えば、誰かに何かを伝えたいというだけなのに、メールや携帯電話やブログやSNS と、ものすごく手間ばかりかかって、私は不便だと感じています。そこにさらに不便さを組み合わせたいとは思っていないんですよ。
■高橋氏 中嶋先生がキーワードという言葉を使っていましたが、抽象度の高いキーワードを使うことは、人の間でぶれがあることを忘れてはならないと思います。ボールを見て「丸い」というキーワードをつけることには、人によってぶれはないでしょう。でも、それが「便利」とか「不便」とかいうキーワードなら、かなり印象にぶれがあるでしょう。ぶれ自体は悪くないのですが、想定内の範囲でぶれているだけならもっと飛躍したものを考えていく必要があると思います。「人間的」「便利」「コミュニケーション」そういうようなキーワードは哲学的で、いろいろな可能性を考えが存在すると思いますが、自分なりにそれを突き詰めて考え、他の人と話をしてふくらませ、その選択肢の中でキーワードの定義にどれを選ぶかという過程を体験してみてほしいと思います。
例えば、ウォークマンだと、「よい音をより小さく」というのは技術者の考え方だと思います。しかし、一般に広まったときのウォークマンの捉え方としては、「ウォークマンで外で音楽を聴く」というスタイルは文化だ、となりました。そこには、技術者がもともと考えていたものよりもずっと多義性があるんです。そのスタイル、文化が、もしかしたら「なまめかしい」ものになるかもしれないし、危険なものかもしれない。そういう多義性が発生することを前提に、キーワードをつきつめてみることが大切でしょう。

二次制作にむけて
これまでの討論をへて、渡辺氏は二次制作に必要な視点として・経験のシナリオ、ストーリー・自分や人がそれをどう使うのかが伝わる・学際的なアイデアのブラッシュアップ・「なまめかしさ」「危険」「膝を打つような」などの、メンバーからでたキーワードとしてまとめた。

■松尾さん ストーリーをどう導きだすかを考えていきたいと思います。

■桾沢さん 具体的なイメージが少なかったので、一般の人に楽しんでもらえるアイデアを目指していきたいと思います。

■山本さん 大変な課題だが、この機会に取り組んでいきたいと思います。

■福島さん 使われるシチュエーションについて目をつぶってしまったところもあるので、そこをつめていきたいと思います。


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