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「デジタル情報空間」と「物理的な現実空間」、それは私たちが日々生きるふたつの空間。今、私たちの仕事も遊びも暮らしも、すべて、このふたつの空間を往復しながら営まれています。
ふたつの空間の接点にあって、それらを接続し、行き来を可能にしている媒介装置が「ケータイ」だといえます。現代人にとってケータイは、もはや手放すことのできない「生活必需品」なのです。

しかし、現在のケータイは、もう限界に達しているのではないでしょうか?
たとえば、ブラインドタッチができない今のインターフェイスでは、使用する人間は、ケータイのモニターをのぞき込んで情報空間に没入したり、顔を上げて現実空間に引き戻されたりするしかありません。
つまり、時間を細切れにされ、意識が分裂させられているのです。これではとてもふたつの世界をシームレスに接続しているとは言えません。
ふたつの空間を接続する装置としてのケータイが、さらなる進化を続けるのなら、それは今のケータイとは、まったく異なるものとなっていくはずです。福冨忠和氏は、そう問題提起しています。

2010年、さらに進化したケータイは、「ウェアラブル」化していくだろう。使用するたびに手にとり、意識を集中させて操作するのではなく、常に身につけ、とくに注意することもなく操作する情報機器となっていくだろう。つまり、ケータイやコンピュータを身体に組み込んでサイボーグ化する、その一歩手前の段階に達するのではないだろうか。

ケータイの進化をそのように予測する福冨氏は、ウェアラブルの使用感を確認し、解決すべき問題点を明らかにするため、みずから「ウェアラブルの装着実験」を開始しました。

福冨氏のアイデア(2004年度活動報告会より)

ウェアラブル・チーム構成

全体統括/
ディレクション/
ウェアラブルマン
福冨忠和氏 SH-Mobileラボ コアメンバー

実験の進め方

ウェアラブル化したケータイを実際に使用し、その使用感、問題点を明らかにしていきたいところですが、ウェアラブルケータイは、まだ商用化されていません。そこで福冨氏は、現在使用可能な機器をつなぎ合わせて擬似的なウェアラブルケータイを作り上げ、それを現実の都市のなかで作動させることにしました。
歩きながら原稿を書く、街を歩きながらブログを更新するなど、試みたいことはたくさんありますが、その前にまず、市販の機器を確実に接続することから始めなければなりません。ここから福冨氏の苦闘が始まりました……。

実験レポート(2005年9月中旬取材)

六本木、国際大学GLOCOM近辺の路上で、ウェアラブルケータイを装着し、実験する福冨氏。

福冨氏「ウェアラブルの外観って、思ったより変じゃないでしょ。コードがなくなればもっといい。ブルートゥース付きのHMDができたら流行ると思いますよ。装着している感覚? パソコン打っている自分いて、その自分が座っているイスを、誰かが後ろから押してくれてるような……」
片眼HMDを着けた福冨氏。

福冨氏「新幹線の中でノートパソコンを使って原稿を書いていたら、吐きそうになりました。自分と画面の振動が違うからですね。HMDだったら画面と体の動きのズレがないので、そんなことにはなりません。ただ、照れくさい。いえ、外観ではなくて。外でメンタルな文章を入力していると、こんなことしていていいのかなって思うんです。電車の中で、メールを読んで声を上げて笑うと恥ずかしいでしょ。そういう照れくささですね」
「片手操作用キーボード」と「片手操作用マウス」を装着する。

福冨氏「いちいちクルマを停めてラジオを聴いたり、カーナビを見たりする人はいないでしょう。みんな、カーナビを見ながら運転します。ウェアラブルも、そのように使えればいいなと思う。しかし、実際には、歩きながらものを考え、さらに入力するのは、けっこう難しいことがわかった。音声入力ですか? ひとりでしゃべりながら歩いている人って、やっぱり変に見えるんですよ(笑)。話している相手がほんとうに実在するのかどうか、外からはわからないですから」
ケータイ型キーボード。

福冨氏「ケータイ型片手用キーボードは、たしかに導入はしやすい。だけど、そうとう慣れないと、ブラインドタッチで漢字変換までやるのは難しい。ジョグダイヤル式もあるけど、それは入力が遅い。バーチャルキーボードは、平面がないと使えない。ウェアラブルは、やはり入力系がネックですね」
福冨氏が実験に使用する機器。

使用機器
  • マイクロオプティカル社製片眼HMD※(MicroOpitical SV-6、MicroOpitical CV-3)
  • ハンディキー社製片手操作用キーボード(HandyKey Triddle2)
  • ビクター製手持ち操作マウス(Victor HC-MM77U)
  • クィックサン製ケータイ型キーボード(Quixun Keiboard)
  • ソニー製ノートパソコン(バイオノート type T)
  • FOMA SH-901
  • 携帯用ゲームポインタauW21T(NTSC出力、GPS、Bluetooth搭載)
  • その他、ハンズリーマイク&ホン、PCカメラ等。
福冨氏「機器の接続がたいへん。パソコンと電話、ヘッドセットの3つをつなごうとするとうまくいかない。つながったり、つながらなかったりして。昨日、とうとうパソコンが動かなくなって、リカバリーしたんですよ。このパソコン、今は実験専用にしかつかえない」

※HMD……Head Mounted Display。ヘッドマウントディスプレイ。頭部に装着するディスプレイ。サングラス、ゴーグル、ヘルメット等に小さなモニターが着いている。顔を動かしても、常に眼前に画面が見える。

取材を終えて

晩秋に予定されているSH-Mobile ラボの発表会では、同時に、福冨氏によるウェアラブル公開実験も予定されています。都市を動き回る福冨氏の姿、言葉や位置情報がユビキターブル上に現れたり、福冨氏とユビキターブルサイドにいる人とがやりとりをしたりする予定です。その際に着用する「QRコード付きの帽子」「QRコード付きのTシャツ」は既に完成。GPSケータイを使って、ユビキターブルに位置情報を送る手配も済みました。ブログも開設し、実験経過を紹介する雑誌連載も進行中です。発表会へ向けて、さらに機器接続の確実性を増すべく、福冨氏は悪戦苦闘を続けています。




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