4. Mobile Visiphone─「どこでもドア」型ケータイ
■ 八谷 僕のワークスの中で一番有名なのは、ピンクの熊のぬいぐるみがメールを運ぶ「PostPet」だと思います。
僕がPostPetを作ろうと思ったのは、『ジョジョの奇妙な冒険』というマンガに出てくる“スタンド”と呼ばれる特殊な力を持つ分身を作る超能力があるのですが、それをものとして作ってみようと思ったのがきっかけの一つだった。あとは、その当時(1996年)はインターネットのメールは男しか使っていなかった。「男しか使わない通信機器に何の意味がある」みたいな気持ちがあって(笑)、女性が使いたくなるようなメールソフトを作ろうと思った。
このように、僕はマンガからものを作ることが結構あります。なぜならそれは、「ウケなきゃいやだ」という精神、それから、我々が作るべきものは、すでに世の中に存在として知られているのではないか、と思っているからです。
そこで、僕のワークショップでは「フィクションに登場する道具から、まだ実現されていない人間の「欲望」を抽出し、そこから未来のケータイの商品を企画する」ということを行いました。ワークショップには、SH-Mobileコンソーシアムの会員企業に所属する3名の方にもご参加いただき、アイデアを提案してもらいました。
ワークショップをはじめる前に、事前調査として「フィクションの中に出てくる道具であなたが欲しいと思うものを一つ教えてください」という調査をお願いしました。
結果は圧倒的に『ドラえもん』のどこでもドアが多かった。では、ケータイでどこでもドアを実現するにはどうしたらいいのか。
どこでもドアのように、物理的に自分が移動することは2010年ではまだ無理そうなので、動画を使ったコミュニケーションになると思われます。
その一つが、Idea1の「旅先からの電話を公衆電話に転送する」というアイデアです。
街中で、旅先の友達から電話がかかってきたら、その電話をスクリーンやスピーカーなど受信システムが整った公衆電話ブースのような場所に転送して、臨場感のある通話を安く楽しめるというシステム。
『ドラえもん』でも、どこでもドアが使われるケースは、ジャングルとか南極とか非日常の世界に行くときに使われることが多い。何らかの目的を持って旅行に行った友人の経験を共有するならば、できるだけ高品位の画像で行いたい。公衆電話の非常にリッチなものとして使うというのはありえるのではないかと思いました。
Idea2は「GPSケータイを使用して、海外でも現在位置から目的地まで最速で到達するための交通手段(電車、バス等複合的に)をリアルタイムで検索できる」サービスです。
先ほどの太田さんの話の中で、「海外でもシームレスに移動できるようになった」という話がありましたが、海外でインターネットが使えない状況に置かれると、普段インターネットで調べることに慣れているだけに、とても不便に感じる。ケータイとGPSを使って世界中どこでも検索サービスを利用できればとても便利ではないかと。
実は、Googleが「Googleマップ」というサービスを提供し始めているので、ケータイでフルブラウザが使えるようになれば、わりと簡単に実現できるのではないかと思います。
Idea3は特殊な場所で使うことを前提に、「デートで使うときに特化したケータイ」を考えてみました。ここでは、水族館を例に出していますが、水槽の魚の中にロボットが混ざっていて、ロボットの魚の視点をケータイを通じてカップルで共有できる。特殊な状況に限定されてますが、離れた空間を恋人と体験、共有できるものを作ればそれはある種のどこでもドア的なものになると思います。
以上の3案が今回のワークショップで出たアイデアです。
「どこでもドアを作ろう」を究極の目標に置いておけば、どこでもドア自体を作ることは無理でも、その途中経過で実現可能なものが出てくるのではないかと思うのです。
ここに出たアイデアでも試作品レベルなら現在でも実現できるものはあると思う。「欲しい道具が試作品を作れそうな段階までアイデアとして落とし込む」ことを考えてワークショップのアイデアをまとめました。
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